SONORITE

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1975年 下赤塚の東口から少し離れたレコード屋で発売されたばかりの荒井由実がリリースしたアルバム 「COBALT HOUR」がかかっていて、最初の曲の軽快なリズムとコーラスワークにひかれて衝動買いする。すでに「ひこうき雲」、「ミスリム」で頭角を現していた彼女ではあったがおそらくこのアルバムでブレークした。帰宅してアルバムを聞きながら裏面の下に小さい字で書いてあったコーラスのメンバーを確認した。まだ当時は演奏者が記されていることも珍しく、英字でHifi-set(フォークソングのグループ赤い鳥から分離した)の3人の名前のほかは知らない名前だった。Tatsuro Yamashita , Taeko Onuki Minako Yoshida この頃から音楽の志向性がそれまでの吉田拓郎に代表されるフォークソングから彼らの方向に変わっていく。

私の高校生活は吉田拓郎の深夜放送ラジオを中心として回っていた。

彼の番組で新曲がかかると録音しておいたカセットを何回も聞き返して歌詞を書き取りさらに和音の展開をギターを弾きながら聞き取りさらにギターのアルペジオ(単音の指使い)までチェックして翌日には学校でクラスメイトに披露する事に快感を覚えていた。頻繁にコンサートに出かけては視力がものすごくいいのにモノを言わせて抑えている手の動きを観察してコピーを完成させていたのもこのころ。今でも大抵の音楽は聞きながらコード進行はわかるし、おおよその展開は見当がつくのはこの頃の暮らしのおかげかな。言葉に対しても相当訓練はされたような気がしていますが。

TBS,文化放送などあちこち場所を変えていた吉田拓郎がこのあたりでニッポン放送の深夜1時の枠に入り、3時からは 帰ってきたヨッパライなどで知られる加藤和彦の時間帯がしばらく続き、気がついたら加藤和彦の代わりにTatsuro Yamashita 山下達郎がパーソナリティーになっていた。吉田拓郎から山下達郎へ。自分の中の音楽の中心が変わった瞬間だった。

それが1976年の4月。彼が最初に結成したバンド SUGARBABEが解散してそのコンサートの模様を放送するといった内容で大貫妙子もメンバーの1人として登場していた。その番組を通じて彼は今でも日曜日にFM東京の「サンデーソングブック」で放送しているようなオールディーズと呼ばれる過去の優れたポップス、ロックそれから彼の周りの続々と出てくる新しい音楽をわれわれに届けてくれた。矢野顕子のJAPANESE GIRLもこの番組で発売前に全曲聴いた。

今でこそポップスの重鎮のような扱いを受けている彼が、実はコンサートでは軽い、軟弱だと非難され、また最初のレコード会社が倒産して印税を1銭も受け取っていないなど不遇な時代が長かったことを知る人は少ない。「RIDE ON TIME」でブレークするまではCM作家で食べていたり、超マイナーな傍流のシンガーだった。今でも自分の事をサブカルチャーと呼び、反骨精神が旺盛なところは変わっていない。ちょっと落語家のような洒脱なしゃべりの中に時折挟まれる痛烈な批判精神は音楽業界の中でも軋轢を潜り抜けてきた無頼の雰囲気さえ漂わせている。

ただ当時から彼が優れているなあと思っていた点はマーケティングセンス。何のためにコンサートがあってプロモーション活動があるのか熟知していた彼は地方のレコード店を網羅、あるいはラジオ局を訪れて今回のようなアルバム発売時には積極的に出演してファンを地道に増やしていった。いわゆる業界 TV,ラジオにもシンパが多く RIDE ON TIME がキムタクのドラマの主題歌に採用されたり 映画「恋愛寫眞」に今回も収録されている78年の「2000トンの雨」が使われたり幅広い年代に強い支持を得ている。

時代が変遷していく中で、音楽の作曲、編曲、録音がパソコンでできるようになり徐々にプロもデジタル化されてついにはすべてがハードディスクの中で行われるようになった。アナログのノイズがなくなり音の厚みの作り方が変化して重ねればいい時代が終わった中で新作 「SONORITE」が今日発売。今までの技術を捨て去って全面 ”PROTOOLS"というデジタル環境にチャレンジした作品。

昨晩早めに手に入った。夜中にヘッドホンで聞いた方が良さが伝わるという 彼のメッセージに沿って これも届いたばかりの iPOD NANOに最初にこのアルバムをセットしてBOSE社のヘッドホン ”QUIET CONFORT2”で聞いてみた。以前のエコーの多い厚みのある音とは違ってシンプルだけれど力強い楽曲が多く新しい時代に挑戦している山下達郎の意気込みが感じられるアルバムでした。
2曲目のラップは事前にラジオで聞いて、すっかり本人がやっているのかと思ったらケツメイシのRYOでした。これは必聴。 

音楽は録音できる芸術の特異性から時間、空間を超越してどこでもいつでも持ち歩ける娯楽となって久しい。でも機会があれば 中野サンプラザ(毎回東京のツアーはここで行われて何度と無く通った)で生のはじけるグルーブを聞きたいものです。

 写真は今朝、自宅で撮影ー 雑誌はギターマガジン今月号(ギタリストとしても高い評価を得ている)、山下達郎ファンクラブの冊子(昨日届いた)、新星堂で手に入れた特集冊子、FM東京の無料冊子、 iPOD NANO(appleで買うと裏面にメッセージを彫ることができます。私のは PLAY & ENJOY! Music is my life.を彫ってもらっています。)それから  BOSEのQuiet Comfort2(音はもちろん 周りの雑音を相殺できるので飛行機や都会で音楽を聞くのに最適。

50を超えてますますチャレンジャー 新しい音楽を生み出そうという姿勢に感服、自分も負けられないなあと勇気付けられるアルバムです。

次回は最近 BS放送で紹介された元ビーチボーイズの天才 ブライアン・ウィルソンが37年の歳月を超えて完成させた復活のアルバム SMILE とその背後にあるストーリーをご紹介したいなあと思っております。

SONORITE(初回限定盤)
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